高松高等裁判所 平成10年(行コ)14号 判決 1999年4月12日
徳島市津田海岸町三番五〇号
控訴人
横井製材株式会社
右代表者代表取締役
横井昭
右訴訟代理人弁護士
松田隆次
徳島市幸町三丁目五四番地
被控訴人
徳島税務署長 中村隆保
右指定代理人
前田幸子
薬師神和夫
中條晴之
改田典裕
宇野秋則
和泉康夫
加藤公一
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一控訴の趣旨
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人が平成五年二月二三日付けでした次の各処分を取り消す。
1 控訴人の昭和六四年一月一日から平成元年一二月三一日までの事業年度の法人税に対する更正のうち、法人税額四八六五万〇三〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(ただし、いずれも被控訴人が平成七年五月二五日付けでした更正及び過少申告加算税賦課決定により一部取り消された後のもの)
2 控訴人の平成二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の法人税に対する更正及び過少申告加算税賦課決定
3 控訴人の平成三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の法人税に対する更正のうち、法人税額一九四五万二三〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定
第二事案の概要
原判決の「事実及び理由」欄の「第二 事案の概要」に記載のとおり(ただし、原判決二七頁一〇行目の「一2(一)」を「一1(二)」に改め、二八頁一行目の「当該土地等」の次に「を」を加える。)であるから、これを引用する。
第三当裁判所の判断
一 当裁判所も控訴人の請求は理由がないものと判断する。
その理由は、以下の通り、訂正・付加するほか、原判決の「事実及び理由」欄の「第三 争点に対する判断」に説示のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決三二頁六行目の「ところで」を次のとおりに改める。
「控訴人の主張は、要するに、控訴人が被合併法人である旧井筒木材から別紙物件目録記載の各土地を帳簿価額で受け入れたことをもって「(土地等の)取得」があったというべきではなく、したがって、措置法施行令三八条の四第二五項一号が、合併により受け入れた土地等の「取得の日」につき原則として被合併法人が当該土地等を取得した日と定めているのは、確認的な意味合いを持つものであって、同号イ、ロが合併の場合の取得日の特例を定めているのは、措置法の具体的・個別的な委任なくして新たな課税要件を創設したものにほかならず、その定めは租税法律主義に反し無効であるというものである。そこで、まず、控訴人が旧井筒木材から別紙物件目録記載の各土地を帳簿価額で受け入れたことをもって「(土地等の)取得」があったといえるか否かについて判断するに」
2 原判決三三頁四行目から三五頁二行目までを次のとおりに改める。
「もっとも、控訴人は、合併による土地等の受入れをもって「(土地等の)取得」があったとすべきはないという根拠として、合併は、被合併法人が解散と同時に消滅し、合併法人が被合併法人の一切の権利義務を承継することによって、その人格が合併法人の人格に承継、包摂され、もって両人格の合一を来すものであり、そこでの不動産の所有権移転は形式的なものであって、その所有権の主体は実質的に変更がないこと、「合併による『(土地等の)取得』」は、被合併法人からみれば「合併による『(土地等の)譲渡』」になるが、法人税法上、「合併による『(土地等の)譲渡』」なる概念はなく、したがってこれに対応する「合併による(土地等の)取得」なる概念も課税関係上考えられず、更に、地方税法七三条の七第二号が法人の合併による不動産の取得について不動産取得税を非課税と定めていることを挙げている。しかしながら、合併による土地等の受入れは、合併会社が別法人である被合併会社から当該土地等の所有権を取得するものにほかならず、合併によって結局は同一法人格に帰するものであり、その意味で所有権移転が形式的であるとはいえるものの、だからといって右受入れが措置法六三条二項にいう「(土地等の)取得」に当たらないということはできない。次に、合併による(土地等の)取得に対応する被合併法人の当該土地等の譲渡が課税関係を生じさせないとしても、そのことと当該取得が措置法六三条二項にいう「(土地等の)取得」に当たるか否かは基本的に別問題であるといわざるを得ず、かかる理由をもって合併による土地等の受入れが同条同項にいう「(土地等の)取得」に当たらないということはできないというべきである。また、地方税法七三条の七第二号の規定は、合併による不動産の取得も同法七三条の二第一項にいう「不動産の取得」に当たることを前提として、これを非課税としているものにすぎないから、前記規定をもって合併による土地等の受入れを措置法六三条二項にいう「(土地等の)取得」に該当しないとする根拠とすることはできない。そして、他に、措置法六三条二項にいう「(土地等の)取得」から合併による土地等の受入れを特に除外すべき理由は見出し難い。
ところで、措置法施行令三八条の四第二五項一号は、合併により受け入れた土地等については、原則的には、当該合併に係る被合併法人が当該土地等を取得した日を取得日とし、合併法人において、被合併法人の土地等の取得日を引き継ぐこととするものの、昭和四八年四月二一日以後に行われる合併により受け入れた土地等で被合併法人の有する資産の価額に占める土地等の価額の合計額の割合(土地保有割合)が七〇パーセント以上である被合併法人との合併により受け入れた土地等(同号イ)については、右規定を適用しない旨規定している。同規定は、合併による土地等の受入れは、形式的には「(土地等の)取得」といえるものの、短期土地重課制度の適用については「(土地等の)取得」とみない方が原則として適当であるとの政策判断の下に、その取得日の判定に関して特別の取扱いをしたものであるが、他方、いわゆる土地管理会社を被合併法人とすることによる租税回避行為が行われることが考えられるため、受け入れる土地等の価額の資産総額に占める割合が一定割合を超えるものについては、同規定の適用を除外して被合併法人の土地等の取得日の引継ぎを認めず、措置法六三条二項の原則に立ち返って、合併による土地等の受入れの日をもって「(土地等の)取得」の日とすることとしたものと解すべきである。したがって、措置法施行令三八条の四第二五項一号イ、ロは、措置法六三条二項の規定を確認したものにすぎず、新たな課税要件を創設したものではないことが明らかであるから、何ら租税法律主義に反するものではない(なお、控訴人は、措置法施行令三八条の四第二五項一号イ、ロが適用されれば、本来課税対象にならない合併前の土地等のキャピタルゲインまでが短期土地重課の対象とされることになり、かかる意味でも同規定は租税法律主義に反するものである旨主張するが、控訴人は、別紙物件目録記載の各土地を帳簿価額で受け入れたものであるから、その取得価額を帳簿価額と同額とすべきことは当然であり、合併前のキャピタルゲインを課税の対象としたものではないことが明らかであるから、控訴人の主張は前提を欠くことが明らかである。)。」
3 原判決三五頁一〇行目の「第一」を「第二」に改める。
4 原判決三八頁九行目、同三九頁一行目、同四一頁七行目、同四二頁九行目及び同四七頁一〇行目の各「別件」をいずれも「物件」に改める。
5 原判決五一頁一行目の末尾に続けて「なお、この判断は、甲七六の陳述書を参酌しても、覆し得ない。」を加え、二行目の「3」を「4」に改める。
6 原判決五二頁五行目の「4」を「5」に改める。
7 原判決五三頁七行目の「されている」から八行目の「ところが、」までを「されているところ(措置法施行令三八条の四第八項)」に改め、一〇行目の「そして、」から五四頁一一行目までを削除する。
8 原判決五五頁一行目及び二行目を「したがって、本件譲渡利益金額の算出については、概算法によるのが相当であって、控訴人の主張は採用できない。」に改め、一〇行目の末尾の次に「控訴人は、一応の合理性をもって土地の評価額を算定し、短期土地重課が適用されないと判断して確定申告書を提出したものであるから、加算税の計算の基礎となった事実のうちに更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて国税通則法六五条四項所定の『正当な理由』がある旨主張するが、控訴人の主張する事由は、帰するところ、土地の評価を誤ったということにほかならないから、右事由をもって右同条同項所定の『正当な理由』があるということはできない。」を加える。
二 よって、本件控訴は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する(なお、控訴人は、本件更正等の金額を基にした訴額に対応する訴え提起手数料を納付したところ、その後、被控訴人において、本件更正等に一部誤りがあったため、再更正等をしたことにより、訴額が下がったが、もし右誤りがなかったならば、納付すべき訴え提起手数料は低額ですんだのに、原審が、このことを考慮せず、訴訟費用の全部を控訴人の負担としたことを非難するが、訴訟費用負担に関する規定からして、右のとおり負担を命じることはやむを得ないことというべきである。)
(裁判長裁判官 山脇正道 裁判官 田中俊次 裁判官 村上亮二)